医療と健康

2025年05月

頭痛との上手な付き合い方

医 療

新生活によるストレス、朝晩の気温差、気圧の変動……春は、頭痛に要注意な季節です。日本人の約4人に1人が頭痛持ちであるにも関わらず、病院をきちんと受診している人は意外と少なく、頭痛との付き合い方をよく知らないままの人も多いといわれています。まずは頭痛のことをきちんと知ることから、対策をはじめましょう!

頭痛には2つのタイプがある

頭痛は、原因となる病気がない「一次性頭痛」と、脳や頭部の病気などが原因となって起こる「二次性頭痛」の2つに分けられます。以前から同じような頭痛をくり返す“頭痛持ち”の人の多くは一次性頭痛で、代表的なものに片頭痛や緊張型頭痛があります。二次性頭痛は、くも膜下出血や脳出血、硬膜下血腫、髄膜炎など命に関わる病気を原因とすることが多く、この2つをしっかりと見分けることが大切です。以下に当てはまる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

二次性頭痛の危険なサイン

●激しい痛みが突然起こる
●手足の麻痺やしびれを伴う
●言葉が出にくかったり、ものが二重に見えたりする
●頭痛が徐々に悪化している
●発熱や嘔吐を伴う

救急車を呼ぶべきか迷ったときは、#7119に相談を! 「救急車を呼ぶべきか?」「急いで病院を受診すべきか?」などについて、電話で相談できます(24時間・365日)。
埼玉県HP:埼玉県救急電話相談
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0703/20151214.html

片頭痛との付き合い方

片頭痛はズキズキと脈を打つように痛むタイプの頭痛で、脳を覆う神経や血管の炎症などによって起こります。日本における片頭痛の有病率は、8.4% *1。約12人に1人が片頭痛に悩まされていますが、約7割もの人が医療機関を受診していないといわれています *2

片頭痛の特徴

●頭の片側または両側がズキズキと脈を打つように痛む
●痛みが4時間~72時間続く
●日常生活に支障をきたし、動くと痛みが増すことが多い
●吐き気や嘔吐、光や音、においに対する過敏などの症状を伴うことがある

片頭痛の誘発因子と増悪因子 *3

●精神面:ストレス、ストレスからの解放、疲れ
●身体面:寝すぎ、寝不足、月経周期
●環境:天候の変化、温度差、光、音、におい
●食事:空腹、脱水、アルコール

片頭痛の経過 *4

片頭痛は、予兆期、前兆期、頭痛期、回復期の4段階に分かれ、実際に痛みが生じる期間の前後にも様々な症状があらわれます

片頭痛の治療

片頭痛を鎮める治療として、主に鎮痛薬や制吐薬が処方されます。その他に、頭痛発作を起こしにくくする予防的治療という手段があります。いずれの治療法も片頭痛の頻度や強さ、日常生活への影響具合などから選択されます。

片頭痛が起きたときの対処方法

●暗く静かな部屋で休む
 光や音など片頭痛を悪化させる刺激がない環境で、体をしっかりと休めましょう。
●痛む場所を冷やす
 血管が拡張すると頭痛が強くなります。患部を冷やし、痛みを和らげましょう。

片頭痛を避ける生活習慣

●規則正しい生活を送る
 睡眠は多すぎても少なすぎても片頭痛の誘因に。睡眠時間のムラで生活リズムを崩さないようにしましょう。
●ストレスを発散する
 こまめに休息をとり、ストレスをためないようにしましょう。趣味や気分転換をいくつかつくっておくのもおすすめです。
●食事をきちんととる
 空腹と脱水を避けるためにも、1日3食とこまめな水分補給を忘れずに。外出時には、軽くつまめるおやつや飲みものを持ち歩きましょう。
●生活環境を整える
 明るすぎる光や大きな音、においなど不快な刺激をなるべく遠ざけましょう。頭痛の誘因となる刺激を和らげるグッズ(サングラス、耳栓、マスクなど)を持参しておくと安心です。

緊張型頭痛との付き合い方

緊張型頭痛は、締めつけられるような鈍い痛みが特徴の頭痛です。身体的ストレスや精神的ストレスにより、筋肉や神経が過度に緊張することで痛みが生じます。一次性頭痛の中で緊張型頭痛が最も多く、日本の有病率は約20%ですが、全世界では約38%にのぼるとされ *2、不健康な状態で働くことによる労働生産性の低下につながることが問題となっています。

緊張型頭痛の特徴

●後頭部からこめかみ、額にかけて締め付けられるように痛む
●痛みが30分~7日間続く
●動いても痛みが増すことはなく、日常生活への支障は少ないことが多い
●吐き気や嘔吐を伴わない
●首や肩のこり、眼精疲労を伴いやすい

緊張型頭痛が起きたときの対処方法

日常生活に支障がない場合は、治療の必要はありません。首や肩を温めたり、からだを動かしたりすることで痛みが軽減することも多いです。必要なときは市販の鎮痛薬(痛み止め)を使用し、無理なく過ごすようにしましょう。日常生活に支障がある、痛みや頻度が増えているときは、医療機関を受診するようにしてください。

緊張型頭痛を避ける生活習慣

●首や肩を温める
 緊張型頭痛は、温めることが効果的。湯船に浸かったり、カイロを使用する他、マフラーを巻いたり、温かい飲みものを飲んだりして、からだを冷やさない工夫も取り入れましょう。
●ストレスを発散する
 緊張型頭痛もストレスが大敵。ストレスを感じているときこそ、定期的にひと息つく時間を設けましょう。
●からだをこまめに動かす
 席を立ったついでに、体操やストレッチで首や肩を大きく動かしましょう。筋肉がほぐれ、血流も改善します。
●長時間同じ姿勢をとらない
 デスクワークや運転など同じ姿勢が続くときは、こまめに休憩を入れましょう。パソコンやスマートフォン操作時の前かがみ姿勢やうつむき姿勢にも要注意。

病院を受診するときのポイント

片頭痛でも緊張型頭痛でも、「日常生活に支障をきたす痛み」が受診する目安。風邪などとは異なり、症状(頭痛)がないときに受診しても問題ありません。安心して医療機関にかかりましょう。頭痛を相談できる診療科には、内科・脳神経内科・脳神経外科・ペインクリニックなどがあります。「どの医療機関がいいかわからない」という方は、一度かかりつけ医にご相談ください。

頭痛に関する専門知識を持つ医師を「日本頭痛学会認定頭痛専門医」として認定する制度や、頭痛を専門に診療する「頭痛外来」を行っている医療機関も増えてきました。頭痛にくわしい医療機関を選ぶ際の参考にしてください。 日本頭痛学会HP:認定頭痛専門医一覧
https://www.jhsnet.net/ichiran.html

正確に伝えることがカギ! 頭痛記録のススメ

あなたの頭痛について正確に伝えられるようにしておくことが、適切な診断や治療につながります。以下の内容を手帳やノートに記録しておき、受診時に持参しましょう。
●いつ頭痛が起きるか?
 頭痛が起きた日、頻度、持続時間など
●どこが痛いか?どのように痛むか?
 頭の片側がズキズキ痛む、後頭部から首にかけて鈍く痛むなど
●服薬した薬や効き方は?
 薬の名称や錠数など
●頭痛が起きた日の体調やその他の症状は?
 ストレスや睡眠の状況、吐き気や肩こり、眼精疲労の有無、日常生活への影響度など
●頭痛をよくする/悪化させる要因は?
 光や音、においなどの生活環境、食事や運動、入浴による変化など

自分の頭痛についてよく知ることが、頭痛と付き合う第一歩。頭痛が和らぐ方法や頭痛があるときの休み方を見つけておくことで、頭痛に対する不安を軽くすることもできます。医療機関を活用しながら、頭痛の上手な対処方法を身につけていきましょう。

参考文献
*1 Sakai F, Igarashi H: Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey. Cephalalgia.1997; 17(1).
*2 Shimizu T, et al.: Disability, quality of life, productivity impairment and employer costs of migraine in the workplace. The Journal of Headache and Pain.2021; 22(1).
*3頭痛の診療ガイドライン作成委員会(編)『頭痛の診療ガイドライン2021』日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修,医学書院,2021
*4日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会(訳)『国際頭痛分類第3版』医学書院,2018