3月の第2木曜日は、世界腎臓デーです。CKDは日本でも多数の患者がいる、腎臓の機能が低下し続ける病気です。CKDの恐ろしいところは、初期には自覚症状がほとんどないため、気づいたときには末期腎不全になっていることが多いということ。実は多くの人がかかる可能性のあるCKD、その理解を深め、予防に努めましょう。
新たな国民病、“CKD”とは?
CKDはchronic kidney diseaseの頭文字をとったもので、慢性腎臓病のことです。世界では約8億5000万人が罹患*1しているとされ、日本人の患者数は約2,000万人*2。なんと成人の約5人に1人に該当します。CKDは成人がかかる病気の中でも高い割合を占めるため、昨今では「新たな国民病」ともいわれています。
*1 Kitty J Jager,et al.: Kidney Int. 2019 Nov;96(5):1048-1050 *2 日本腎臓学会 (編):CKD診療ガイド2024.東京医学社,2024
腎臓って、どんな臓器?
そもそも腎臓は身体のどこにあるのか、ご存じでしょうか? 腎臓は背中側の腰の上、左右に1つずつある臓器です。サイズは握りこぶし大で、重さは1つ120~150gほど。心臓が毎分送り出す約5Lの血液のうち、1/5量である約1Lの血液が腎臓を通過しています。
腎臓の働きとして一番大きなものは、血液中の老廃物や塩分をろ過し、尿として身体の外に出すこと。その他にも、体内の水分量や電解質バランスの調整、血圧の調整、造血ホルモンや活性化ビタミンDの生成など、実に様々な役割を担います。そして腎臓の働きが悪くなると、老廃物や毒素が体内に蓄積して尿毒症になる、身体がむくむ、高血圧や貧血、骨に障害が出るなど、身体全体に悪い影響が及びます。
CKDって、どんな状態?
CKDは、①「腎障害」か②「腎機能低下」のいずれか、あるいは①②の両方が3か月以上続く状態のことをいいます。
しかし、CKDにはこれといった自覚症状はありません。むくみやだるさ、貧血、吐き気、食欲不振などの症状があらわれたときには、すでに病気が進行していることがほとんど。早期に治療すれば進行を抑えられますが、放置すれば末期腎不全に陥り、人工透析や腎臓移植が必要になります。
「血清クレアチニン値」で、GFR値を自動換算してみよう!CKDの早期発見に役立つのが、「尿中のたんぱく質濃度を調べる尿検査」と「血液中のクレアチニンを調べる血液検査」です。
健康診断などの結果で「血清クレアチニン値」がわかる方は、下記の日本腎臓病協会のHPから「血清クレアチニン値」と「年齢」「性別」を入力してみてください。腎臓が老廃物を排泄する能力を示す数値である、GFR値が自動換算されます。あなたの腎臓の働きをチェックしてみましょう!
|
CKDに“なりやすい人”がいる?
CKDのリスク要因としてあげられるのが、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病、そして腎臓自体の病気です。健康な人も加齢によって腎機能は低下しますが、これらのリスク要因をもっている人は、より腎機能の低下が加速します。また、喫煙や飲酒などの生活習慣も、CKDに関係します。
以下のリスク要因をもつ人は、半年に一度、尿検査と血液検査を受けることをおすすめします。
CKDのリスク要因●糖尿病 ●高血圧 ●肥満、脂質異常症 ●メタボリックシンドローム ●喫煙・飲酒 ●高齢者 ●家族にCKD患者がいる人 ●消炎鎮痛薬を常用している人●尿路の病気や膠原(こうげん)病のある人 |
CKDと診断されたら
腎臓は一度悪くなってしまうと、元には戻りにくい臓器です。そのためCKDと診断された場合は、「腎不全の進行を抑え、透析治療への移行を遅らせること」がもっとも重要です。また、動脈硬化の進行や心血管疾患の発症を防ぐための治療も必要になります。
治療の基本は「生活指導・食事指導」と「薬物療法」。それでも進行を食い止められなかった場合は、「人工透析」となります。人工透析は機能しない腎臓に代わって体内にたまった尿毒素を体外に排出させる方法で、腎臓を治すものではありません。人工透析は一生涯続けなければなりませんが、夜間透析を利用できる施設であれば、昼間働き夜間に透析を受けるといった生活も可能です。
腎臓にやさしい生活を送ろう
CKDの早期発見には、尿検査や血液検査を受け、腎臓の状態を定期的に確認することが何より重要です。特定健診などの健康診断は、毎年必ず受診するようにしましょう。
そしてCKDの発症を防ぐためには、よい生活習慣を継続させることも大切です。以下のような腎臓に負担をかけない生活を意識し、日頃からCKD予防に努めましょう。
血圧・血糖コントロールをしっかり行う
高血圧症や糖尿病など生活習慣病の人は特に、血圧や血糖値の管理が重要です。CKDを発症しない・進行させないよう上手にコントロールしましょう。
水分を十分にとって、排尿を我慢しない
医師などから特に水分の制限をされていない場合は、水分をたくさんとりましょう。多くの尿を排出する方が腎臓に負担がかかりません。
塩分・脂肪の摂り過ぎに注意する
塩分や脂肪分の摂り過ぎは高血圧や脂質異常症の原因になります。だしを効かせる、酸味や香味野菜でアクセントをつけるなど、食生活を工夫しましょう。
薬を必要以上に服用しない
腎臓は老廃物や余分な塩分だけでなく、体内に入った薬の多くを代謝・排出します。薬剤の濃度が濃くなると糸球体や尿細管に悪影響が出るため、過剰服薬には要注意です。
<参考文献>
参考資料
・Kitty J Jager,et al.: Kidney Int. 2019 Nov;96(5):1048-1050
・日本腎臓学会 (編):CKD診療ガイド2024.東京医学社,2024
・日本腎臓病協会:慢性腎臓病(CKD)の普及・啓発
・厚生労働省:e-ヘルスネット.CKD / 慢性腎臓病
・東京法規出版:「知って防ごう!慢性腎臓病」
☆次回のテーマは『フレイル・ロコモ・サルコペニアの違いって何?』を予定しています。 「人生100年時代」が謳われるようになり早10年。日々健康に関する新しい言葉や概念が登場し、昨今は「フレイル」や「ロコモ」「サルコペニア」といった用語も市民権を得てきたのではないでしょうか。しかしこの3つ、違いをご存じですか? これらはいずれも「運動」や「健康」に深くかかわりますが、共通点も多く混同されがち。今回はこの3つが正しく理解できるよう、きちんと整理・解説。あわせて、各チェック方法もご紹介します。 |
|