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気づいていますか? 自分の心のSOS

写真11月は“過労死等防止啓発月間”です。毎日の長時間労働や職場での人間関係、仕事疲れ、家庭内・生活上の問題など、様々な悩みやストレスを抱える中で、自分の心のSOS=ストレスサインを見逃していませんか? 今回は、身体面・心理面・行動面にあらわれるストレスサインにはどのようなものがあるのか、またストレスが招く病気などについて解説します。何より大切なのは、“早めの気づき”です。


そもそも、ストレスって何?

ストレスとは、心が外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のことをいいます。元々は物理学の分野で使われていましたが、それを医学・生理学分野にとり入れたのがカナダの生理学者ハンス・セリエ。1936年、「ストレスとは生体の中に起こる生理的・心理的な歪みであり、このストレスを作るものが外界から加えられたストレッサーである」というストレス学説を提唱しました。
外部からの刺激をあらわす“ストレッサー(ストレス要因)”には、3つの種類があります。①物理的ストレス要因(暑さ・寒さ、騒音など)、②化学的ストレス要因(公害物質、たばこやアルコールなど)、③心理・社会的ストレス要因(仕事・家庭の問題、人間関係など)。私たちがいわゆる“ストレス”と表現するものの多くは、③の心理・社会的ストレス要因にあたります。

心理・社会的ストレス要因の例

  • ●仕事上の悩み:仕事疲れ、職場の人間関係 など
  • ●家庭内の悩み:家族間の不和、離別・死別、将来への不安・悲観、介護・看病疲れ など
  • ●健康上の悩み:身体的な病気、精神的な病気 など
  • ●経済・生活上の悩み:生活苦、多重債務、事業不振 など

あなたのストレスサインは?

ストレスを感じることで様々な影響を受ける私たちの心身は、ときに“ストレス反応”を起こします。これは心が発する危険サインである“ストレスサイン”。「このまま放っておくと心の病気になりますよ、注意が必要です!」という心のSOSといえます。 ストレスサインには、不眠や腹痛など“身体面”にあらわれるものや、気分の落ち込みなど“心理面”にあらわれるもの、飲酒量が増えるなど“行動面”にあらわれるものなど多種多様です。

ストレスが招く心の病気

ストレスの蓄積によってあらわれるストレスサイン。心が発するSOSにきちんと対処せずにいると、治療を要する心の病気を招いてしまうことがあります。ストレスが原因と考えられる病気は主に、うつ病、アルコール依存症、統合失調症の3つが挙げられます。

1. うつ病

症状
欲の減退や判断力の低下などの精神症状の他、睡眠障害や頭痛・肩こりなどの身体症状が出る。よくある病気と思われがちだが、重症化すると自殺に至る場合もあり油断は禁物。
原因
過度のストレス・疲労など日々の生活体験に加え、几帳面・真面目・責任感が強いといった性格が関係して、脳内の神経伝達物質量が減り情報伝達機能に不具合が出る。
対応
ストレス要因から離れて休養をとることが大切。症状によって、薬物療法や心理療法なども考慮する。

2. アルコール依存症

症状
お酒が手放せず、やめると禁断症状があらわれる。精神的・身体的に依存がみられ、社会生活や人間関係に支障を来すようになったら要注意。
原因
職場や家族関係などで心理的トラブルを抱えていることが多い。そのストレスや悩みのはけ口となった飲酒が習慣となり、自分ではやめられなくなる。
対応
自分でやめることはできないため、周囲の人が協力して専門家などへ相談・受診する必要がある。治療は薬物療法や行動療法が中心。重度の場合は入院治療も考慮する。

3. 統合失調症

症状
妄想や幻覚などの陽性症状、喜怒哀楽や意欲がなくなり引きこもるなどの陰性症状、記憶力や判断力がなくなるなどの認知機能障害の主に3つ。
原因
はっきりとした原因はわかっていない。脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることが関係する、強いストレスがきっかけになるなどと考えられている。日本では100人に1人が発症するとされ、珍しい病気ではない。
対応
薬物療法で脳内機能を安定させる。病状に応じてリハビリテーションを取り入れる、積極的に話しかけるなど、周囲の人の温かい対応と理解が回復に役立つ。

自分や身近な人の様子に「いつもと違う」と感じたら

自分自身、あるいは身近な人の様子に心の不調を感じたら、まずは“話す”ことが鍵となります。それぞれの対処法を知っておきましょう。

1. 自分自身:誰かに話してみましょう

悩みやストレスがいつまでも解消できない、心身の不調が続くなどの場合は、一人で抱えずとにかく誰かに相談してみましょう。人に話すと、溜め込んでいた思いを打ち明けられて気持ちが軽くなったり、自分では気づかなかった問題点や解決の糸口を見つけられたりすることも。相談するのは専門機関や相談機関はもちろん、家族や友人、同僚などの身近な人でも構いません。心配に思う内容に合わせて、相談する人を選ぶのもよいでしょう。

2. 身近な人:「どうしたの?」と声がけしましょう

心の病気は本人に自覚がないことも多々あるため、周囲の人の気づきが大切です。まずは声をかけましょう。話を聞く際は、問題点を指摘したりせず、本人の言いたいことや悩みを受け入れる“傾聴”の姿勢を持つことがポイント。そして、専門医や専門機関への相談・受診をすすめましょう。本人が専門機関などへの受診を拒む場合は、家族や周囲の人が専門医に相談してみてください。対処法などのアドバイスを受けられます。

困ったときの相談窓口

心の不調は精神科や心療内科、メンタルクリニックなどで診察を受けられます。また、各種相談機関に相談することもできます。全国の自治体では様々な悩みに関する健康相談窓口を設けています。身近に相談相手が見つからない、話しても解決できない問題がある、第三者の意見が聞きたいなど、相談先として利用しましょう。

こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省)

0570-064-556
心の問題について、本人の他、家族や周囲の人も気軽に相談できる公的な窓口。地方自治体が運営しており相談は無料(通話料はかかる)。全国どこからでも、電話をかけた所在地の公的な相談機関に接続される(相談に対応する曜日・時間は都道府県・政令指定都市によって異なる)

法テラス・サポートダイヤル(日本司法支援センター)

0570-078374(月~金曜:9~21 時、土曜:9~17 時)
金銭問題、離婚・DV、相続・成年後見、近隣トラブルなど様々な法的トラブルの内容に応じて、法制度や相談機関・団体などを紹介する。通話料は固定電話からは全国一律3 分9.35 円( 税込)、携帯電話からは20 秒11 円程度(税込)

いのち支える相談窓口一覧(いのち支える自殺対策推進センター)

心の悩みから生活上の問題に関するものまで、全国の自治体や厚生労働省が案内する各種相談窓口をまとめている

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳(厚生労働省)

メンタルヘルスに関する相談機関や医療機関の案内、心の健康度を診断するセルフチェックリスト、体験談などを掲載。健康障害に関する相談窓口を設置している

知ることからはじめよう こころの情報サイト(国立精神・神経医療研究センター)

心の健康づくりに関する情報や医学的情報、医療・福祉・労働・年金など様々な社会的支援に関する情報、国の施策に関する情報などをわかりやすく掲載している

ストレスサインに気づいたら、早めのケアが肝心です。風邪や骨折など身体の病気や怪我と同じように、心の不調も早く気づいて対処すれば、悪化を防ぎ早く治せます。
また、ストレスをためないコツを身につけることも大切です。きちんと睡眠をとる、バランスのよい食事を心がける、適度な運動習慣をもつなど“毎日の生活習慣を整える”、自分の好きなことや心身共にリラックスできる“自分に合ったストレス解消法をもつ”、心が疲れているときはつい狭くなりがちな“物事の見方・考え方を工夫する”などです。ストレスをためない、ストレスに負けない心の健康づくりも意識しましょう。

<参考文献>
・国立精神・神経医療研究センター:知ることからはじめよう こころの情報サイト
・厚生労働省:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳
・東京法規出版:「早く気づいて! 心の病気」

 
 
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