春はイチゴ、夏ならスイカ、秋になったら柿にブドウ、冬はやっぱりみかんとリンゴ。日本では四季折々の果物が楽しめますが、日本人はあまり果物を食べていません。果物には様々な健康効果があることから、厚生労働省が果物摂取を推奨しているのをご存じでしょうか。また、「果物は太りやすい」というイメージがありますが、はたして……? 今回は、不足しがちな果物を積極的に食べたくなる、その優れた効能について解説します。
日本人の1日当たりの果物摂取量の実際
厚生労働省は「健康日本21(第三次)」において、20歳以上の1日当たりの果物摂取目標量を「可食部(皮や種などを除く食べられる部分)200g」としています。
しかし、実際の平均摂取量はというと、98.9g。なんと目標値の約半分です。しかも、20~40代が1日に食べる果物の量は40~60g程度にとどまり、同じ20~40代で「果物をまったく食べない」という人は、半数以上を占める結果となっています(厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」)。
国や医学会が果物摂取を推奨
厚生労働省が「健康日本21」で“野菜と果物の摂取量の増加”を目標の一つに掲げているのは、様々な研究結果において果物摂取には高血圧や2型糖尿病など生活習慣病のリスクを減らす効果があり、健康維持にも大きな役割を果たすと証明されているからです。
複数のガイドラインでも同様に、日本高血圧学会「高血圧ガイドライン2019」では野菜・果物の積極的な摂取を推奨(重篤な腎障害患者は除く)、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では新鮮な果物の適度な摂取は動脈硬化性疾患の発症リスクを低下させるとしています。
国の指針や医学会のガイドラインにおいて、科学的根拠に基づき積極的かつ適切な量の果物摂取が推奨されているのです。
果物を食べない理由とは?
果物を食べない理由には、「皮をむくのが面倒だから」「値段が高い」などがあるようです。中には、「果物は甘いから太る」というイメージから避ける人も。しかし、これは大きな誤解です。
果物には糖分が含まれているため、果物摂取量の増加はエネルギー量の増加に影響し、肥満との関連性も考えられます。しかし、果物の多くは一般的なお菓子やスイーツと比較するとかなり低カロリー。しかも脂質をほとんど含まないため、100g当たりのエネルギー量は50kcal程度と、同じ重さのショートケーキの15%程度です。
下記の菓子類とのエネルギー量の比較表を見てみましょう。同量のスナック菓子や甘いお菓子と比べて、果物のカロリーは約1/6程度、中には1/10以下のものも。「果物は甘いから肥満の原因になる」というイメージは、妥当ではないといえるのではないでしょうか。
なお、世界保健機関(WHO)では、砂糖類の摂取量を全摂取エネルギー量の10%以下に抑えることを勧めています。ちなみに、その対象となるのは加工品や調理などで添加された糖類で、果物や野菜から摂取する糖類は含まれていません。果物や野菜は、栄養素や健康に有益な植物成分の重要な摂取源と考えられているからです。
果物に含まれる栄養素とその健康効果
果物には、各種ビタミンの他、ミネラル、食物繊維が多く含まれており、その働きは成長促進や抗酸化作用、老化防止、白内障・高血圧・動脈硬化予防など多岐にわたります。可食部200gに相当する、様々な果物の目安の数量もあわせて見てみましょう。
果汁100%ジュースやドライフルーツは“果物”扱い?
残念ながら、果汁100%ジュースは果物には含まれません。厚生労働省と農林水産省の策定した「食事バランスガイド」では、飲んだジュースの半分量を果物として扱いますが、あくまで果汁100%ジュースは補助的なものという考え方です。果汁100%ジュースを倍量飲んでも、果物を摂取したことにはなりませんのでご注意ください。
ドライフルーツやジャム、シロップ漬けの缶詰の場合も、多くは糖分が加えられているため果物の扱いにはなりません。濃縮または乾燥されていると、重量当たりのエネルギー量や栄養成分が加工前の果物に比較して増えるものが多いため、例えばドライフルーツを200g食べると糖分の摂り過ぎになります。果物として換算しないことを十分に踏まえて、食べるようにしましょう。
果物をおいしく200g食べるためのコツ
栄養豊富かつヘルシーで、種々の疾患予防にもなる栄養素を多く含む果物。毎日無理なく200gを取り入れるには、どのように工夫すべきでしょうか? 果物摂取量を増やすコツをご紹介しましょう。
1. 旬の果物を食べる
旬の果物はおいしい上、旬だからこそ流通量が増えるので手頃な値段で手に入ります。日本ほど様々な種類の果物が栽培されている国はありません。果物で四季の味覚を楽しみながら、毎日の食卓を彩りましょう。
2. 食べ方を工夫する
ヨーグルトやシリアルに合わせる、凍らせてスイーツ感覚で食べるのもおすすめです。100%のジュースにすればビタミンとミネラルが、スムージーではさらに食物繊維も摂れます。サラダやマリネなど、料理に取り入れるのもよいでしょう。果物の甘さと酸味を活かすことで調味料も控えめにでき、見た目も華やかになります。
3. いろいろな場面で食べるようにする
1日量の200gは、朝・昼・夜で分けて摂ってもかまいません。食後のデザートとしてはもちろん、間食のおやつ代わりにも最適です。子どもの場合は特に、食事だけではまかなえない栄養素や水分の補給にもなります。外食時やお弁当に取り入れるのもよいでしょう。
ぜひ一度、いろいろな果物の重さを実際に量ってみてください。多くの果物には水分が80~90%含まれるため、200gが案外少なく感じられるかもしれません。
毎日おいしく果物を摂取することが、結果として健康維持や生活習慣病予防につながります。日々の生活に、意識的に果物を取り入れましょう。
<参考文献>
・厚生労働省:健康日本21(第三次)
・厚生労働省:令和元年国民健康・栄養調査
・中央果実協会:FACT BOOK果物と健康(六訂版)
・東京法規出版:みんなの食生活ガイド 毎日の食生活を見直してみよう!
☆次回のテーマは『気づいてますか? 自分の心のSOS』を予定しています。 11月は「過労死等防止啓発月間」です。長時間労働や職場での人間関係、仕事疲れ、家庭内・生活上の問題など、様々なストレスを抱えて過ごす中で、自分自身のストレスサイン=心のSOSを見逃していませんか? 身体面・心理面・行動面に現れるストレスサインにはどのようなものがあるのか、ストレスが招く病気などについて解説します。ストレスが生じる仕組みや自分自身の心の状態をよく知ることこそ、心の健康維持につながります。大切なのは、早めの気づきとセルフケアです。 |
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