現代人は“座り過ぎ”といわれますが、中でも日本は“座りっぱなし大国”。皆さんは1日何時間くらいを座って過ごしていますか? はたして座り過ぎにはどのような悪影響があるのでしょうか? 今回は、身体にも心にも関係する座り過ぎの弊害と、その解消法について解説します。キケンです、座り過ぎ!
現代人は“座り過ぎ”ている
仕事はデスクワークが中心、移動手段は車、あるいは電車で空席があれば必ず座り、家に帰るとスマートフォンやテレビを座って眺め、読書や趣味の時間も座って過ごす……。一般的な日本人のライフスタイルとして、寝ている以外の大半は座って過ごすことが多いのではないでしょうか。しかし、この“座っている時間”が長過ぎると、様々な健康問題が発生するといわれています。
世界最長の座りっぱなし大国!?
そもそも日本人は、他国に比べても座っている時間が長いとされています。世界20か国の18~65歳の成人約5万人を対象にした調査*によると、日本人の座っている時間は最長の1日平均7時間(420分)! 最も短いポルトガルの2.5時間(150分)と比較すると、日本人は約3倍も長く座っていることになります。
そして厚生労働省「平成25年国民健康・栄養調査」によると、平日1日の総座位時間が「8時間以上」と回答した人は、男性で38%、女性で33%もいることが判明しているのです。
(*:A Bauman,et al.: Am J Prev Med. 2011;41(2):228-235.)
座り過ぎによる健康面への影響
座り過ぎによって、心身にはどのような影響があるのでしょうか。動かずじっとしていることでエネルギー消費量や血流量、筋肉量が減り、肥満や腰痛・椎間板ヘルニア、心臓病や糖尿病、がんなどを発症するリスクが高まる他、寿命や老化にも影響を及ぼし、さらにはうつ病や認知機能の低下への関連が指摘されるなど、様々な健康問題を生じることが明らかになっています。
座り過ぎ予防のポイント
座り過ぎを解決する方法は、いたってシンプル。それは、“こまめに立つ”ことです。なお、重要なのは“強さ”より“頻度”。運動する習慣があっても、普段座り過ぎていれば座り過ぎによる様々なリスクは変わらないとされています。週末にまとめて運動すればいいや、ではなく、日々意識して座り過ぎの状態を短くして、立ち上がったり動いたりすることが重要です。
外出先や仕事中、自宅でできる“こまめに立つ”ためのアクションをご紹介。ご自身に合った方法を、ぜひ日々の生活に取り入れてみてください。
●外出先・仕事中にアクション!
・電車やバスの利用時はなるべく立つ
・在宅勤務の場合はスタンディングデスクを用いるなど、立って仕事をする
・職場でコピーをとるときはかかとの上げ下げ
・フロア移動は階段を使う、こまめに立ち歩く(プリントを取りに、お茶を入れに)
・デスクで座ったまま足踏み・かかとの上げ下げ
●自宅でアクション!
・じっとしている状態が30分続いたら、立ち上がってその場で足踏み
・テレビのCM中はストレッチや家事をするなど立ち上がる
・スマートフォンを使うときはなるべく立つ、あるいはタイマーをかけて定期的に立ち上がる・ストレッチをする
・よく使うもの(眼鏡や新聞など)をあえて遠くに置き、歩いて取りに行く
・近所であれば買い物は徒歩や自転車で行く
座り過ぎ解消のエクササイズ
こまめに立つことに加えて、軽く身体を動かすとより効果的です。全身の筋肉のうち、下半身に占める割合は約60~70%。中でも人体で最も大きい筋肉である太もも前側の大腿四頭筋と、第二の心臓といわれるふくらはぎの筋肉を鍛えることがおすすめです。以下に座ったまま、または立ち上がってできる、座り過ぎ対策として効果の高いエクササイズをご紹介。30分に一度、1セットを10回としてまずは2セット、行ってみましょう。
座ったままでエクササイズ!
片脚上げ
①少し腰を曲げた姿勢で伸ばす脚のももの下に手を入れる。
②つま先を上に向けながら、ゆっくりとひざを伸ばし、ゆっくりと元に戻す。
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かかと上げ
①背もたれにもたれずに、背筋を伸ばして椅子に腰掛ける。
②かかとをゆっくり上げ、ゆっくり下ろす。
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立ち上がってエクササイズ!
スクワット
①背筋を伸ばして椅子に浅く腰掛け、腕を胸の前でクロスさせる。
②ゆっくり「1・2・3」と数えながら立ち上がる。
③背筋を伸ばしたまま、ゆっくり「1・2・3」と数えながら座る。
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かかと上げ
①テーブルや椅子、椅子の背につかまって、足を肩幅に開いてまっすぐ立つ。
②かかとをゆっくり上げてつま先立ちになり、ゆっくり下ろす。
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こまめに立ち上がること、または軽い運動をすることで下肢の筋肉が刺激され、様々な効果が期待できます。血糖・血中脂質の値が改善して、肥満やメタボ、糖尿病などを防ぐ。筋活動が活性化して、むくみが取れて血流が改善、高血圧を防止する。体力が向上して腰痛、転倒を防ぎ、フレイル・介護予防にもなる、などなど。30分に一度、1時間に一度など自分でルールを決めて、座り過ぎ予防のためのアクションをルーティン化してみましょう。
……そして、このトピックスを座りながら読んでいるそこのあなた。さあ、まずは立ち上がりましょう!
<参考文献>
・厚生労働省:eヘルスネット.座位行動の定義とその実態
・東京法規出版:「ストップ!座りすぎ」2024
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