日本が世界一の長寿国であることは皆さんご存じの通り。長寿国とはつまり、「平均寿命が長い国」ということ。寿命が長いことはいいことですが、やはり“健康で長生き”したいものですよね。そこで重要になってくるのが、「健康寿命」です。
実は日本では、「健康寿命」を延ばすことが国としての大きな課題となっています。今回は健康寿命の定義や平均寿命との違い、重要なポイントである平均寿命と健康寿命の“差”、健康寿命を延ばすための具体的な対策など、寿命にまつわるイロイロを解説します。
*健康寿命って何?
平均寿命とは「0歳における平均余命」のことです。生まれてから亡くなるまでの“生存している期間”の平均を指し、その間の健康・不健康など状態は問いません。
一方、健康寿命とはWHO(世界保健機関)が2000年に提唱した新しい指標で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。“自立して健康に過ごせる期間”の平均であり、病気などで介護や支援を必要としている期間は健康寿命には加算されません。
平均寿命と健康寿命は、同じ寿命でも“健康状態が考慮されているかどうか”に違いがあるといえます。
*日本は平均寿命も健康寿命も世界第1位
WHOが発表した世界保健統計2023年版*によると、日本人の平均寿命は84.3歳、世界第1位です(男性は81.5歳で、スイスの81.8歳に次いで2位。女性は86.9歳で、2位韓国の86.1歳を0.8歳上回って1位)。そして健康寿命は74.1歳で、こちらも世界第1位です(男性72.6歳、女性75.5歳で、男女共に1位)。
ここで注目すべきなのは、その“差”です。平均寿命と健康寿命には、男性8.9年、女性11.4年の差があります。この差の年数分というのはすなわち、”不健康な期間”を表します。男性は約9年、女性は約11年にもわたって、健康上で何かしらの問題を抱えながら日常生活を送っている、ということになります。
なお、日本は平均寿命、健康寿命とも世界第1位ですが、平均寿命と健康寿命の差では第33位。十分上位ではありますが、“長生き、かつ健康な期間も長い”、とはいえないのかもしれません。
(*WHO:https://www.who.int/data/gho/publications/world-health-statistics、183か国を対象とした2019年の推計値より)
*平均寿命と健康寿命の差を縮めよう!
平均寿命が年々長くなっている現在、平均寿命と健康寿命の差がさらに大きくなることが懸念されています。平均寿命と健康寿命の差が大きくなるということは、長生きである分だけ医療費などの負担が増えますし、介護や入院などの期間が長くなることで個人の生活の質も低下します。また、介護給付金などの社会保障負担の増加にもつながります。
ゆえに、日本では平均寿命と健康寿命の差をいかに縮めるか、健康寿命をいかに延ばすか、が国としての大きな課題となっているのです。
*健康寿命を延ばすための国の取り組み
厚生労働省では2019年に「健康寿命延伸プラン」を策定し、2040年までに2016年時の健康寿命を男女ともに3年以上延伸することを目指しています。また、2000年からは「健康日本 21」をスタート。これは「すべての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」を目指した健康づくり運動で、2024年から開始する「健康日本 21(第三次)」で掲げる4つの目標のうち、一番目が「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」となっています。このように、日本では国をあげて健康寿命を延ばす取り組みを行っているのです。
*具体的なアクションを始めてみる!
国のプランや運動と聞くと何だか難しく感じられますが、つまりは私たち一人ひとりがいきいきと健康に長生きするよう努力しましょう、というメッセージに他なりません。いかに健康寿命を延ばすかはやはり、“個人での健康意識を上げること”に尽きます。日々のちょっとした改善で生活習慣病を予防し、健康への地道な努力を続けることが何より重要です。
では、より具体的にどう行動すべきか? 日々続けられそうな行動として、以下はいかがでしょうか。いずれも現在の生活をちょっぴり改善すると実践できそうなものばかり。ぜひ今日から始めて生活の質、人生の質を上げ、健康寿命を延ばすことにつなげていきましょう。
運動の習慣をつける
一日10分間の早歩き、週末だけ40分ジョギング、毎日10分間のラジオ体操 など
歩く習慣をつける
いつもよりあと10分歩く、ひと駅分歩く、好きな曲3曲分歩く など
野菜不足を解消する
いつもの食事にトマト半個分プラスする、不足分100gを温野菜にして食べる など
朝食の習慣をつける
朝食抜きの人は朝カフェで一日を始めてみる、おにぎり1個でも口にする など
生活習慣を変える
禁煙する、もう30分早く寝る など
<参考資料> ・WHO:https://www.who.int/data/gho/publications/world-health-statistics
・厚生労働省e-ヘルスネット:健康寿命延伸プラン
・厚生労働省ホームページ:健康日本21(第三次)
・厚生労働省健康局総務課:コミュニケーションの手引き 生活習慣の改善をうながすために
|