9月は「世界アルツハイマー月間」です。超高齢社会を迎えた日本において、認知症は誰もがなる、あるいはその患者にかかわる可能性のある、とても身近な病気です。そもそも認知症とはどのような病気なのでしょうか。認知症になるとどうなるのか、家族が認知症になったら?などなど。まずは認知症について、知るところからはじめましょう。
*認知症は高齢期に最もかかりやすい病気のひとつ
1994年、WHO(世界保健機関)と国際アルツハイマー病協会が毎年9月を「世界アルツハイマー月間」と制定し、認知症への理解を呼びかけています。日本での認知症患者は2012年の時点で 462 万人、2025年には約 700 万人になると推定されており、65 歳以上の高齢者のうち、約5人に1人が認知症になると見込まれています。また厚生労働省研究班の調査では、85歳のうち約40%が、95歳以上では約80%の人が認知症と考えられています。
*認知症ってどんな病気?
実は認知症は、“病名”ではなく、さまざまな原因で脳の働きが悪くなり、認識力や記憶力、判断力が低下、日常生活に支障をきたす“状態”のことをいいます。その状態を引き起こす原因となる病気が、アルツハイマー型認知症や血管性認知症、レビー小体型認知症など。この3つは、三大認知症とよばれています。現在、日本の認知症患者の原因疾患の60%以上を占めるのが、アルツハイマー型認知症です。
*認知症になるとどうなるの?
①認知症の症状
認知症の症状には、中核症状と行動・心理症状の2種類があります。認知症の本質ともいえる、脳機能の低下で記憶力や理解力、判断力が著しく衰える症状を、中核症状といいます。そして、中核症状のせいで周囲にうまく適応できなくなり、心身の衰えや不安・あせりによって生じる症状が、行動・心理症状です。行動・心理症状は、周囲が配慮して認知症の人のストレスを取り除くなどすると、発生を抑えたり緩和したりできるといわれています。
②認知症を診てくれるのは何科?
認知症を疑った場合、かかりつけ医のいる方はまずかかりつけ医に相談し、適切な病院などを紹介してもらいましょう。認知症に対応する診療科や医療機関は、物忘れ外来や認知症外来、精神科、心療内科、老年科、認知症疾患医療センターなどです。また、相談に乗ってくれる機関には、地域包括医療センターや市区町村の高齢福祉担当窓口、保健所・保健センターなどがあります。
認知症は進行性のため、早めに専門医の診察を受けることが肝心です。認知症と診断されるのは辛いことですが、早く知ることで今後の生活の準備ができたり、早期治療や対処で進行を遅らせる可能性を高めたり、より早く周囲の支援を受けられるなどのメリットもあります。
③認知症の治療って?
認知症の治療には、症状を一時的に改善させ進行を遅らせる薬物療法のほか、心理療法などがあります。今現在は主に、認知機能の低下を防ぐことや、患者が穏やかに暮らせるように対処・支援することが治療の中心となっています。
*認知症の人とどうやって接するの?
認知症の症状が進行しても、喜びや悲しみなど感情面はとても繊細です。「認知症の人自身は何もわからない」は誤解で、認知症になって不安で悲しく、最も混乱しているのは本人です。認知症の人の気持ちに寄り添って、その人らしさを尊重し、尊厳を保ち、辛さや孤独感を和らげるなどの環境づくりをして、症状の軽減につとめましょう。
また、家族が認知症になった場合、「自分たちでやらなければ」と家族だけで抱え込むケースが多くあります。認知症には長期かつ継続的に適切な治療やケアが必要です。認知症の人はもちろん、その家族の心身の健康のためにも、専門家のアドバイスや地域の医療・福祉サービスのサポートなどを上手に活用し、必要な情報や外部の適切なサポートを受けましょう。
さらなる超高齢社会に向かう日本において、誰もが認知症についての知識をもつことが大切です。認知症のことを知ることは、認知症の人を理解し、どのように支援すればよいかを知ることにもつながります。年をとれば誰もがなる可能性のある認知症。ぜひ、知ってください。
<参考資料> ・朝田 隆:都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応.2013
・二宮利治:日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究.2015
・政府広報オンライン:知っておきたい認知症の基本.
・厚生労働省:認知症を理解する.
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