疲れやすい、やる気が出ない、でもとくに身体に悪いところはないみたい…。そんな原因がはっきりしない不調は、ストレスによる自律神経の乱れが原因かもしれません。今回は自律神経について解説し、自律神経をケアする=整える方法をご紹介します。
■自律神経とは
起きているときも、寝ているときも、心臓は全身に血液を送り続け、呼吸は止まることがありません。こうした生命活動を支えている脳と全身をつなぐネットワークが自律神経系(自律神経)です。無意識下で働いているため“自律”神経と呼ばれています。 自律神経にはアクセルの役割を担う交感神経系(交感神経)とブレーキの役割を担う副交感神経系(副交感神経)があります。その働きはシーソーのようにバランスをとりながら全身を支配していて、ひとたびそのバランスに異常が出ればその影響は全身に及びます。
交感神経 |
●興奮や活動のときに活躍するアクセル役を担う神経系
●昼間に活性化し、体がよく動くように血圧を上昇させ、呼吸数や心拍数を上げる |
副交感神経 |
●リラックスのときに活躍するブレーキ役を担う神経系
●夜間に活性化し、心身をリラックスさせる。消化活動など、体にエネルギーをためたり、リフレッシュさせたりするために機能する |
■自律神経ケアのキーワードは「バランス」
自律神経の働きがよい状態とは、交感神経と副交感神経がバランスよく活性化していることです。この状態だと心身が安定し、ストレスに強くなります。
しかし、ストレスの多い現代人は交感神経が活性化しやすく、メンタルヘルス不調につながりやすい状態です。また、加齢の影響で男性は30歳前後、女性は40歳前後から副交感神経の働きが低下してきます。
■不調かも…と思ったら、自律神経をケアする3つの行動
1日の中で気持ちを切り替えたいとき、集中力が続かない、やる気がでないとき、焦りやイライラが止まらないときなどは、自律神経のバランスを整えることが大切です。とくに、交感神経の活性が過度に高い(心身の緊張度が高い)状態のときには、副交感神経を活性化する以下の3つの行動を意識してみてください。手軽かつ即効力のある方法です。
1つ目の行動:ゆっくり動く
「ゆっくりとした動作」を心がけてみましょう。ゆっくり活動すると自ずと呼吸が深くなります。深く呼吸すると血流がよくなり体のすみずみまで血液が行き渡り、頭がすっきりして気持ちに余裕が出てきます。
【ゆっくり話す】
落ち着いて話ができるので、説得力や信頼感も増します。話の出だしをゆっくりさせることで話自体もわかりやすくなります。
【ゆっくり歩く】
肩の力を抜き、頭の中心が空につながっているような意識で首を伸ばし、おへそから前に出るような気持ちでゆっくり歩きます。上を向き、気道がまっすぐになるよう心がけましょう。
【ゆっくり食べる】
ひと口30回ぐらい、よくかんで食べます。消化がよくなり、食欲が抑えられ、減量にもつながります。 咀嚼(そしゃく)のリズムは副交感神経の活性化につながるばかりでなく、脳の刺激にもなります。
2つ目の行動:深い呼吸をする
呼吸は誰もが無意識に行っているものですが、ゆっくりとした深い呼吸には自律神経を整える働きがあります。ストレスを感じているときは交感神経が優位となり、呼吸は自ずと速くなっています。深呼吸すると副交感神経が活性化し、心身がほぐれます。以下の呼吸法を覚えておくと便利です。
【呼吸法】
①3秒かけて、ゆっくりと鼻から息を吸う ②口をすぼめて6秒かけてゆっくりと息を吐く ※①と②を繰り返す
3つ目の行動:笑顔をつくる
にっこりと笑ってみてください。つくり笑顔でもかまいません。自ずと鼻から息がすっと抜け、肩の力が抜けたのではないでしょうか。これは口角をきゅっと上げたことで顔の筋肉の緊張がほぐれ、首の動脈にある圧受容体というセンサーが「血管を広げ、副交感神経を活性化せよ」という指令を出すからです。口角が上がればよく、軽い笑みにも効果があります。
【笑顔のエクササイズ】
笑顔は表情筋という筋肉の動きでつくられます。普段から動かしていることが大切です。朝の歯磨きの時間などに鏡の前でやってみましょう。
●表情をやわらかくしましょう |
不機嫌な顔、疲れた顔になっていないかもチェック |
●目で笑ってみましょう |
目の周りの筋肉を動かす。目で笑顔をつくると自ずと口角が上がる |
●口の両端を上げてみましょう |
割り箸を割らずに水平に寝かせて軽くかみ、口の両端(口角)を割り箸のラインよりも上に持ち上げる
「イ、イ、イ……」と発声しながら行うと口角を上げやすい |
●いろいろな表情をつくってみましょう |
表情筋を動かしやすくするために、驚いた表情、悲しい顔などいろいろな表情をつくる |
■自律神経を整える1日の過ごし方
交感神経と副交感神経は昼間と夜間とでそれぞれリズムをもち、交互に優位になっています。規則正しい生活とよくいわれますが、それは自律神経のリズムに沿った生活をすることにほかなりません。
リズムを整えるスイッチは以下の3つです。
自律神経のリズムを整える3つのスイッチ
①太陽光 |
体内時計をリセットするスイッチ。起床したら十分な太陽の光を浴びる。体が活動モードに切り替わるため、自律神経のリズムを整えやすくなる。 |
②食事 |
体内時計が整うスイッチ。1日3度、規則正しく食べる。とくに朝食を食べることで体内時計のリセット効果がさらにアップ。自律神経の働きやホルモンのバランスが整い、気分や体調が安定する。 |
③身体活動 |
昼夜のメリハリをつくるスイッチ。日中は活発に活動しておくと、睡眠時に分泌するホルモンであるメラトニンが十分に放出され、質の高い睡眠を得ることができる
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以下のようなNG行動は変えていきましょう。
自律神経を乱すNG行動
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NG行動 |
チェンジ |
OK行動 |
朝時間 |
朝寝坊をして朝食を食べずに出勤 |
→ |
朝は余裕をもって起床、朝食をとり、出勤(または始業)する |
昼時間 |
忙しくて休憩をとる時間がない。昼食は仕事をしながら適当にすませる |
→ |
忙しくても、昼休みは必ずとる。昼食はよくかんで食べる。食後に10~15分程度、外を歩く |
夜時間 |
日中のストレスは食事やお酒で解消。深夜までスマホを見て過ごす |
→ |
帰宅したらゆっくり入浴、就寝2時間前までに食事をすませる。就床前は暗めの光の中でリラックスして過ごす |
日ごろのケアで自律神経のバランスを整えましょう。心身が安定し、仕事や家事などのパフォーマンスが向上します。毎日を元気に気持ちよく過ごしましょう!
<参考資料> 「はたらく人の自律神経ケア」東京法規出版 「「ゆっくり」動いて健康になろう!」東京法規出版
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