肝臓は、機能が低下しても自覚症状が現れにくいことから“沈黙の臓器”と呼ばれ、症状が出たときには「肝硬変」や「肝がん」など命にかかわる病気に進行している場合があります。今回は、肝臓を弱らせる原因を解説、肝臓を守る生活習慣のポイントをご紹介します。
■“人体の化学工場”と称される肝臓の働き
肝臓は体内で最大の臓器であり、数百種類にも及ぶ重要な働きを担っています。
肝臓の主な働き
①解毒する
体にとって有害な物質(アルコール、薬剤など)や老廃物(アンモニアなど)を無毒化し、尿とともに体外に排出する。
②消化を助ける
胆汁を生成し、脂肪の消化・吸収を助けて胃や腸の働きを高める。
③栄養素の加工や貯蔵を行う
食事でとった栄養素を、体が利用できる形に変えて貯蔵し、必要に応じて血液を介して全身に送る。
■チェック! 肝臓の病気と進行
肝機能の低下を放っておくと、最悪の場合、命にかかわります。原因を理解し、対策に取り組みましょう。
肝臓の主な病気 |
原因 |
脂肪肝 |
肝臓に中性脂肪がたまりすぎた状態。食べすぎや飲みすぎ、運動不足などが原因 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
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お酒を飲まない脂肪肝で起きた肝炎。内臓脂肪がたまっている人に多く、肝硬変や肝がんに進むことも |
アルコール性肝炎 |
大量にお酒を飲む人が脂肪肝からさらに肝炎を招いた状態 |
ウイルス性肝炎 |
B型・C型肝炎ウイルスによる肝炎が多い(血液等を介した感染による)。今まで一度も肝炎ウイルス検査を受けていない人は受診を |
慢性肝炎 |
肝臓の細胞が壊されていく。進行するまで症状はない ※急性肝炎の場合はだるさや吐き気、黄疸などの症状がみられます |
肝硬変 |
肝臓の細胞が線維化して、肝臓が機能しなくなっていく |
肝がん |
肝炎や肝硬変からなることが多く、大半は肝炎ウイルスが原因だがNASHでなることも |
■肝臓の“SOS”に気づくには、「健診・検査」が不可欠!
早期に肝機能の低下に気づき、悪化を防ぐために最も有効な対策は、定期的に健診を受けることです。健診では、採血を行い、血液検査の数値から肝臓の状態を調べます。 また40~74歳までの方は、肥満(内臓脂肪の蓄積)に着目した「特定健診」(市町村や職場で実施される)を受診できます。「年に一度の受診のチャンス」を逃さずに、必ず受けて、肝臓の異常の“早期発見”に役立てましょう! なお、ウイルス性肝炎については、肝硬変や肝がんをおこしやすいC型、B型ウイルスの感染の有無を検査で調べることが大切です。40歳以上でいままで一度も検査を受けていない人は、肝炎ウイルス検査を受けましょう。保健所での検査実施や、特定健診とともに検査を受けられる場合もあります。
■実践! 肝臓をいたわる生活習慣3つのポイント
食事や運動など生活習慣の改善が、肝臓をいたわることにつながります。以下の3つのポイントを、できることから実行してみましょう!
ポイント1 お酒との付き合い方を見直そう
お酒の飲みすぎは、アルコール性の脂肪肝の原因となります。以下の適量を守って飲み、週に2日は休肝日を作りましょう。 ※女性や高齢者は男性よりもアルコールの影響を受けやすいので、下記の半量が目安です。
1日の適切な飲酒量
ビール |
中びん1本(約500mL) |
日本酒 |
1合(約180mL) |
焼酎・泡盛 |
2/3合(約120mL) |
ワイン |
グラス2杯(約240mL) |
ウイスキー・ブランデー |
ダブル1杯(約60mL) |
※酒量は目安としてご活用ください。
ポイント2 食べ過ぎは禁物! 食事の量・内容を改善しよう
肥満になると肝臓に脂肪がたまり、肝機能が低下してしまいます。適正な食事量と栄養バランスに気を付けて、肥満の予防・改善を目指しましょう。
食べ方を整え、食事量を適正にする |
▶よくかみ、ゆっくりと食べて食べすぎを防ぐ ▶3食きちんととり、欠食はしない |
肝臓の働きをサポートする栄養素をとる |
- ▶野菜類、海藻類、キノコ類、豆類などビタミン・ミネラル、食物繊維をとり、肝臓への負担をやわらげる
- ▶白身魚、低脂肪牛乳、青魚、納豆・豆腐などの良質なたんぱく質をとり、肝臓の再生能力を助ける
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ポイント3 身体活動・運動を行う
ウォーキングなどの有酸素運動で脂肪を燃やして適正体重を保ち、肥満を予防しましょう。運動をする時間がなかなかとれない場合は、以下のように日常生活で身体活動量をアップしましょう。
- ▶歩く距離を増やす(買い物を徒歩でする、通勤時に一駅歩いてみるなど)
- ▶エレベーターやエスカレーターをやめ、階段を使う
- ▶買い物などは車ではなく徒歩、自転車を使う
- ▶家事をこまめに行い体を動かす
症状に気づいてから「もっと早く健診・検査を受診し、生活改善していれば…」と後悔しないために、肝臓を守る生活を、今日からさっそく始めましょう!
<参考資料> 「肝臓病の危険がある人へ」東京法規出版 「脂肪肝」東京法規出版 「ご存じですか?NASH」東京法規出版 「肝炎ウイルス検査を受けましょう」東京法規出版
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