筋肉量は加齢とともに減少します。筋肉量が減ると、転倒して骨折したり、感染症や糖尿病などのさまざまな病気にかかりやすくなり、将来、介護が必要になる危険が高まります。今回は筋肉量を増やし、保持する「貯筋」の大切さについてご紹介します。
筋肉がもつ重要な役割
筋肉は手足などを動かすだけでなく、体温の維持や水分の保持など、生命維持にかかわる重要な役割を担っています。 筋肉の主な働き
運動 |
体を動かす、支える、呼吸をするなど |
保護 |
内臓や太い血管を保護する |
ポンプ |
筋ポンプ作用で、心臓と共同して血液を体内に循環させる |
熱産生 |
体温を維持し、免疫機能を高める |
エネルギー貯蔵 |
エネルギーとして利用される栄養素グリコーゲン、たんぱく質を貯蔵する |
貯水 |
筋肉内に水を貯め、体内の水分量を保持する |
筋肉は使わないと減る一方!
筋肉は、定期的に負荷(刺激)を与えないと、加齢とともにどんどん衰え、50歳代になると1年につき1%ずつ萎縮していくといわれています。また、病気で寝込むなど「不活動」状態となると、筋肉はたった2日で1%減少することがわかっています(※1)。
注意! 筋肉量の低下は病気やけがを呼び込む
十分な筋肉量を維持できないと、以下のようなリスクが高まってしまいます。
① 転倒、骨折
介護が必要になった主な原因の約13%が転倒・骨折によるものです(※2)。筋肉量を保ち、筋力を鍛えてバランス力をアップし、転倒予防に努めることが大切です。
② 生活習慣病
筋肉量が減ると、基礎代謝量(※3)が減少し、太りやすい体になります。さらに、BMI(※4)25以上の肥満になると、生活習慣病のリスクが高まります。 肥満(内臓脂肪の過剰な蓄積)に加え、高血糖、高血圧、脂質異常などが2つ以上重なると、生活習慣病の前段階である「メタボリックシンドローム」と診断されます。血管の傷害が進み、放置すると糖尿病をはじめ、心筋梗塞、狭心症、高血圧、動脈硬化といった生活習慣病が引き起こされます。
③ サルコペニア肥満
「サルコ(=筋肉)」「ペニア(=減少)」とは、加齢に伴って筋肉量が減少し、身体機能が低下した状態をいいます。これに加えて、筋肉だった部分が脂肪に置き換わったものが「サルコペニア肥満」です。体を動かさない運動不足の状態が続くとサルコペニアが進行し、さらに動くのがおっくうになり、脂肪がたまってサルコペニア肥満が進行するという悪循環に陥ります。 サルコペニア肥満は高齢者に多いのですが、中高年世代も注意が必要です。BMI25以上、筋肉率(体重あたりの骨格筋量の割合)が男性で27.3%未満、女性で22%未満の人は、サルコペニア肥満の可能性大です(※5)。サルコペニア肥満になると、自立した生活を送るために必要な身体機能の低下、転倒、骨折、死亡のリスクが上昇します。
④ ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(ロコモ)は、骨や筋肉、関節などの運動器の機能が弱まり、立つ、歩くといった動作に影響を与え、将来要介護になる危険が高い状態をいいます。40歳以上の大半の人が、ロコモの可能性があるといわれています。
「貯筋」をしておけば、将来の健康リスクが減少します!
これらを予防するためには、早いうちから、身体活動量(日常生活の中でこまめに体を動かすこと+運動)を増やし、筋肉量や筋力を維持、向上させる「貯筋」をしておく必要があります。末永く元気でいるために、今日から「貯筋」をはじめましょう!
おすすめ「貯筋術」
こまめに体を動かすことと、運動(筋トレ)の合わせ技で効率よく「貯筋」するのがおすすめです。
1日当たりの身体活動の目安は、18~64歳の人なら、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分間、65歳以上の人は毎日40分です(※6)。まずは、一日に今より10分体を多く動かす+10分(プラステン)から始めてみましょう!
1.今日からチャレンジ! 日常生活で筋肉を使うことを意識しましょう!
- 歩く速度を上げる、歩幅を広くする
- エレベーターやエスカレーターではなく、階段を利用する
- 通勤時に一駅多く歩いてみる
- 休日も動くよう心掛ける
- 掃除する回数を増やす
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床や窓拭きなどの家事も、筋肉を刺激する立派な運動です。日常生活の中で積極的に行っていきましょう。
2. 筋トレ:自宅で筋トレの習慣を
ジムに通わなくとも、自宅でできる筋トレをご紹介します。是非習慣づけてください。
自宅でおすすめ筋トレ
- 出典:
- (公財)健康・体力づくり事業財団ホームページ
筋肉は、何歳になっても鍛えることで強く大きく発達させることができます。今日から「貯筋」をして、将来に備えましょう!
- ※1:
- (公財)健康・体力づくり事業財団ホームページ「貯筋のすすめ」より
- ※2:
- 厚生労働省「2019(令和元)年国民生活基礎調査」
- ※3:
- 基礎代謝量:寝ているときなど安静時に消費するエネルギー量のこと。
- ※4:
- BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
- ※5:
- 筋肉率は市販の体組成計で計測可(ただし、販売元によって数値が異なるので注意)。
- ※6:
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」
<参考資料> (公財)健康・体力づくり事業財団ホームページ
「筋肉の衰えを防ぐために毎日5分の貯筋を」東京法規出版
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