夜間の最低気温が25℃以上の「熱帯夜」が増えてきた日本の夏。熱帯夜による睡眠不足が、心身にさまざまな悪影響を及ぼすことが明らかになっています。今回は、暑い夏でもぐっすり眠るための工夫をご紹介します。
■ 夏によく眠れない原因は?
暑さで寝苦しい夜を過ごした翌朝、体のだるさを感じる方も多いのではないでしょうか。よく眠れない理由は、主に以下の3つです。
1.夏は睡眠時間が短くなりやすい
睡眠時間は季節によって変わります。ある研究によると、冬に比べて夏は、睡眠時間が約25分短いという結果がでています(※1)。睡眠時間が、日照時間と深く関わっていることがうかがえます。
2. 暑い夜が眠りを妨げる
私たちの体は、睡眠中は深部体温(脳や内臓の温度)を下げて脳や体を休ませ、朝の起床に向かって徐々に深部体温を上げる仕組みになっています。熱帯夜で深部体温が下がらないと、途中で目が覚めてしまったり、眠りが浅くなったりすることがわかっています(※2)。
3.エアコン、扇風機等の風にあたると覚醒しやすくなる
眠っているときにエアコンや扇風機の風にあたり続けていると、夜中に何度も目が覚めてしまい、睡眠の質が悪くなることがわかっています(※2)。
■ 睡眠不足が心身に与える悪影響
睡眠不足は、さまざまな不調の原因になります。
1.生活習慣病のリスクを高める
慢性的な睡眠不足や不眠症は、生活習慣病にかかるリスクを高めることがわかっています。睡眠不足が2日続いただけで、たっぷり眠った日と比べて食欲を抑えるホルモンが減少し、逆に食欲を高めるホルモンが増加します。
2. 熱中症のリスクを高める
睡眠不足によって体のリズムが乱れると、体温調節機能がうまく働かなくなり、熱中症を発症しやすくなります。
3.うつ病などの精神疾患につながる
睡眠の量と質を保つことは、心の健康づくりにも重要です。睡眠不足や不眠は、ストレス耐性を低下させるため感情が不安定になったり、不安やうつなどメンタルヘルス(心の健康)の悪化を招いたりします。
4.事故・エラーなどのリスクが上がる
睡眠不足や睡眠障害があると、疲労感、集中力低下、眠気、意欲減退などから、作業能率が下がり、ミスや事故を招きやすくなります。
■ 目指せ夏バテ知らず!夏の快眠3つのポイント
寝苦しい夏も、以下のポイントを取り入れて十分な睡眠をとりましょう。
快眠ポイント1まずは、自分に睡眠が足りているかを知る
次のチェックリストのいずれかにチェックが入ると、睡眠不足が疑われます。快眠ポイント2、3を取り入れて十分な睡眠をとるようにしましょう。
快眠ポイント2寝室を快適な睡眠環境にしよう
・エアコンは28℃前後に設定
眠りやすい室温の目安は26~28℃前後、湿度50~60%です。エアコンの除湿機能を利用し、快適な室温・湿度になるように設定温度を調節しましょう。
・風が体にあたらないように注意
エアコンの風にあたると熟睡を妨げるため、「風向」を調整することも大切です。部屋のレイアウト上難しいようなら「風よけカバー」を利用してください。
快眠ポイント3寝る1~2時間前にぬるめの湯船に入ろう
人間は、深部体温が下がると寝付きやすくなります。そこで、眠る1~2時間前にぬるめの湯船(38℃程度)につかって深部体温を上げておくと、眠る時間に深部体温が下がるタイミングとなるので、スムーズに寝ることができ、熟睡しやすくなります。寝付きづらい夏は、特に意識して湯船に入るようにしてください。
これらの快眠ポイントを取り入れて、暑い夏も元気に乗り切りましょう。
- ※1:
- Volkov J, Rohan KJ, Yousufi SM, Nguyen MC, Jackson MA, Thrower CM, Postolache TT. Seasonal changes in sleep
duration in African American and African college students living in Washington, D.C. Scientific World Journal 2007;7:880-887
- ※2:
- Morito, N. et al. : Effects of two kinds of air conditioner airflow on human sleep and thermoregulation. Energy and Buildings.2017;138:490-498.
<参考資料> 「新・睡眠指針2014対応版 睡眠指針12か条」東京法規出版
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