世間に浸透したと思われるお薬手帳ですが、2020年10月内閣府が行った「薬局の利用に関する世論調査 」によると、まだ28.6%もの人が利用していないことがわかりました。また、使っている人も調剤薬局でもらう薬の情報が書かれたシールを貼る……という使い方しかしていないのではないでしょうか。お薬手帳を使用するメリットは沢山あります。今回は、常に持ち歩いていただきたいお薬手帳のメリット、使い方についてご紹介します。
■ お薬手帳とは
お薬手帳とは、自分が使っている薬の名前、飲む(使用する)量、日数、使用法などを記録できる手帳です。副作用歴、アレルギーの有無、過去にかかった病気、体調の変化についても記入でき、薬局などで無料でもらうことができます。最近では、アプリによる電子お薬手帳も増えてきました。
■■ お薬手帳が登場した背景 ■■
1993年、薬の飲み合わせによる死亡事件・ソリブジン薬害事件が起こりました。フルオロウラシル系抗がん剤を服用している患者さんに、帯状疱疹の薬である抗ウイルス剤ソリブジンが処方されたところ、併用服用による副作用で15名が死亡したのです。ソリブジンが販売されてわずか2カ月の間のことでした。このことにより、併用している薬をチェックする必要性が高まり、お薬手帳の誕生へとつながっていったのです。
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■ ご存じですか?お薬手帳6つのメリット
お薬手帳には、健康面から経済面にいたるまでさまざまなメリットがあります。
1 薬の重複や副作用を予防できる
副作用のない薬はありません。ですが、お薬手帳があれば、複数の医療機関にかかっている場合も薬剤師が薬の重複や飲み合わせをチェックでき、副作用のリスクを減らすことができます。また、診察時に提示すれば、医師が処方薬を決定するのに役立ちます。
2 OTC医薬品の飲み合わせもチェックできる
ドラッグストアなどでOTC医薬品(処方せんがなくても購入できる一般の市販薬)を購入したときも、お薬手帳に記載し、薬剤師に飲んでいる処方薬の成分との重複や、飲み合わせに問題がないかなどをチェックしてもらうことができます。
3 自分の病歴などの情報を伝えられる
副作用歴、アレルギー、過去にかかった病気をお薬手帳に記入することで、処方された薬で起こる問題はないか確認ができ、副作用のリスクを減らすことができます。
4 急病や災害の時に、日常服用している薬がわかる
万が一、外出時に倒れてしまったとしても、カバンの中にお薬手帳があれば、いつも飲んでいる薬がわかり、緊急時も適切な対応につながります。東日本大震災では、被災後にお薬手帳を持っている人といない人では、診療にかかる時間が大きく違い、災害の混乱期では特に役立ったそうです(※)。
※ 日本薬剤師会「東日本大震災時におけるお薬手帳の活用事例」東日本大震災時におけるお薬手帳の活用事例【PDF】(外部サイトへリンクします)
5 体調の変化、質問や意見、要望などをメモしておける
薬の処方が変わった時、体調の変化をメモしておくと、その薬が合うかどうかの判断がしやすくなります。またその他にも、医師や薬剤師に伝えたいことを書いておくと、忘れずに伝えることができます。
6 条件が揃えば、料金が安くなる
薬局での支払いには「薬剤服用歴管理指導料」という費用が含まれています。3カ月以内に同じ薬局で薬をもらった場合、お薬手帳を持参していないと、3割負担の場合40円ほど料金が高くなります。かかりつけ薬局を決めておくのがおすすめです。
■ 今日から始めてほしい、お薬手帳活用方法
お薬手帳は肌身離さず持ち歩こう
メリット4で紹介したように、お薬手帳を持ち歩くことは、緊急時にあなた自身を守ります。処方されている薬がなかったとしても、「現在使用している薬がない」ということがわかれば、使える薬も変わってきます。健康保険証と一緒に、常に持ち歩いてください。
お薬手帳は1人1冊にまとめておく
お薬手帳は、同時に複数の医療機関や薬局を利用している場合でも、1人1冊にまとめましょう。お薬手帳が複数あると、薬の重複のチェックが煩雑になってしまいます。複数持っている人は、薬局で「お薬手帳を1冊にまとめてほしい」といえば、まとめてもらえます。
かかりつけ薬局を決め、お薬手帳に記載しよう
処方せんは、どこの調剤薬局でも受け付けてくれますが、薬を調剤してもらう薬局は、ひとつに決めましょう。すべての処方を把握しているので、薬の重複や飲み合わせ、残薬を漏れなくチェックしてくれるので安心です 2021年4月より、お薬手帳に通常使用する薬局名と、薬局または薬剤師の連絡先を記載するよう、薬剤師は患者さんに説明することとなりました。かかりつけ薬局を決め、薬局名、また薬剤師名を記入しておきましょう。
あまっている薬を記載しよう
飲み忘れや自分で判断して飲むのをやめた等の理由で、処方された薬が残っていませんか?お薬手帳に残薬(飲まずに残っている薬)を記載しておけば、薬剤師にお薬を整理してもらえたり、次回から処方してもらう薬の量を医師と相談し調整してもらうことができます。薬が減る分、医療費も安くなります。
お薬手帳は、あなたの健康を守るとても大事なツールです。常に持ち歩き、徹底活用してください。
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