塩分の取りすぎは「高血圧」を引き起こし、動脈硬化が進み「脳卒中」「心臓病」といった命にかかわる疾患につながると同時に、要介護の大きな原因にもなっています。今回は、高血圧対策の1つである減塩に焦点を当て、日常生活で取り入れたい減塩対策についてご紹介します。
■ 食塩の摂取量が多い日本人
日本人の食塩摂取量はこの10年間で減少傾向にありますが、いまだ10g前後と、目標値に比べて高い状況が続いています(表1)。世界的にも、日本人の食塩摂取量は多く、世界保健機関(WHO)が推奨する1日あたりの食塩摂取量5.0gと比較すると、約2倍もの食塩をとっていることになります。
○表1 日本人の食塩摂取量(1日あたり)
目標値 |
男性 |
7.5g未満 |
女性 |
6.5g未満 |
実際値
(平均) |
男性 |
11.0g |
女性 |
9.3g |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」、「平成30年国民健康・栄養調査」
■ 食塩の過剰摂取が様々な病気につながる
食塩の主成分であるナトリウムは、体内の水分バランスの維持、筋肉の収縮や神経伝達に関わるなど、非常に重要な働きをしており、体に不可欠な成分です。ただし、過剰に摂取することで、高血圧を引き起こし、「脳卒中」「心臓病」といった脳心血管系疾患や「腎臓病」、さらには「認知症」の発症に影響することがわかっています。
また、塩分濃度の高い食品をとり続けている人ほど、胃がんのリスクが高いことも明らかになっており、減塩は、高血圧の人だけでなく健康な人たちにとっても、疾患予防という点から非常に重要なことが明らかになっています。
■ 日々の食事にひと工夫で、減塩に取り組もう
減塩に取り組むためには、日々の食習慣を見直す必要があります。ここでは、「作るとき」「食べるとき」にわけて、日常生活でできるちょっとした工夫をご紹介します。
<作るときのコツ>
○ いつもの食品を減塩食品に
しょうゆ、味噌といった調味料、練り物などの加工食品やめん類など、最近では、減塩タイプの食品が増えてきています。いつもの食品を減塩食品に置き換えることで、自然と食塩の摂取を抑えられます。
○ 香辛料、香味野菜を上手に利用
こしょうや、わさび、しょうが、七味などの香辛料、しそ、ねぎ、にんにく、みょうがといった香味野菜を上手に利用することで、味付けを食塩に頼らなくてすみます。酢やレモン、ゆず、かぼす、すだちなどの酸味も、料理の味を引き立たせるのに適しています。
○ みそ汁は具だくさんに
みそ汁は具だくさんにすることで、汁の量が減り、減塩につながります。
○ 天然食品でだしをとる
こんぶ、かつおぶし、にぼし、干ししいたけなどからは、塩味が少なくてもおいしく感じる「うまみ」が出ます。
○ 新鮮な食材を選ぶ
新鮮な食材は、濃い味付けをしなくても、十分食材のおいしさを楽しむことができます。
<食べるときのコツ>
○ めん類の汁は残す
めん類のスープを全部飲み干すという人は要注意。汁を全部残すことで、2~3g減塩できます。
○ 調味料は「かける」ではなく「つける」
例えばとんかつでも、ソースを直接かけて食べるのではなく、つけて食べることによって、ソースの量が減り、食塩の摂取を抑えることができます。
○ 食塩量の多いものは食べる回数を減らす
佃煮や塩辛、漬物、練り物など、食塩量が多いものは、食べる回数を減らしましょう。
○ 外食するときは、栄養成分表示をチェック
外食する際や市販のお惣菜、あるいはインスタント食品などを食べる際には、栄養成分表示の「食塩相当量」を確認しましょう。
○ 海藻、果物、野菜、豆類を積極的にとる
海藻、果物、野菜、豆類には、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、尿中への排泄を促す「カリウム」が多く含まれている食材があります(表2)。日頃から、そういった食材を意識して取り入れたいですね※。
○表2 カリウムが多く含まれる食材の例(100gあたりのカリウム量)
海藻 |
刻み昆布 |
8200mg |
干しひじき(乾燥) |
6400 mg |
果物 |
あんず(乾燥) |
1300 mg |
いちじく(乾燥) |
840 mg |
バナナ(生) |
360 mg |
キウイフルーツ(生) |
300 mg |
野菜 |
切干し大根(乾燥) |
3500 mg |
さつまいも(干しいも) |
980 mg |
豆類 |
大豆(蒸し大豆) |
810 mg |
ひきわり納豆 |
700 mg |
※腎機能障害のある人はカリウム摂取に制限があります。くわしくは医師に相談してください。
■ 無理なく、継続できるように
減塩対策は、現代人にとって喫緊の課題ではありますが、毎日そのことばかり考えていては、食事そのものが楽しい時間でなくなくなってしまいます。「昼はラーメンの汁をたくさん飲んでしまったから、夜は漬物を食べるのをやめておこう」というように、1日の中で塩分バランスはうまく調整するようにし、無理なく継続できるよう、取り組んでいきたいですね。
参考資料:
「日本人の食事摂取基準2020年版」厚生労働省
「平成30年国民健康・栄養調査」厚生労働省
「さあ、減塩!~減塩委員会から一般のみなさまへ~」日本高血圧学会ホームページ
「カリウムの働きと1日の摂取量」長寿科学振興財団・健康長寿ネット
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