「ドライアイ」とは、目の表面を覆っている涙の異常により引き起こされる疾患です。近年、患者数は増えており、パソコンやスマートフォンの使用が広がり、集中して目を使う機会が増えたことなどが、要因として考えられます。今回は「ドライアイ」について解説し、日常生活でできる予防や対策をご紹介します。
■ ドライアイとは?
ドライアイとは、涙の分泌量の減少や、量は十分でも涙の質が下がることによって目の表面を潤す力が低下した状態をいいます。失明につながることはないものの、慢性的な目の不快感を引き起こし、生活の質を長期にわたって損なう疾患です。
ドライアイの人の割合は、40歳以上の男性の12.5%、女性の21.6%という疫学調査が報告されており※1、その数は増加傾向にあります。
※1 「ドライアイ診療ガイドライン」(ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会)より参照
■ ドライアイの症状
ドライアイに陥ると、涙が「目を守る」という大切な役割を十分に果たせなくなり、目に様々な症状をきたします(表1)。
○表1 ドライアイに多い症状
・目が乾く |
・目がゴロゴロする |
・目が開けにくい |
・目が疲れる |
資料:日本眼科医会「ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―」
■ ドライアイの主な原因は2つ
○ 涙の分泌量が減る
「加齢による涙腺の萎縮」や、「コンタクトレンズの装用」によって、涙の分泌量は低下します。そのほか、緊張状態やストレスが原因で低下することや、シェーグレン症候群※2など他の病気が原因で分泌量が減ることもあります。
※2 シェーグレン症候群
自己免疫疾患の1つ。涙やだ液などを作りだす外分泌腺に炎症が起き、それらが十分に作りだせなくなってしまう。
○ 涙が蒸発しすぎる
パソコンやスマートフォンの長時間使用により、まばたきする回数が減少して涙が蒸発しやすくなります。エアコンなどによる送風や空気の乾燥でも、涙の蒸発は進みます。また、涙の成分である油分の分泌が減少し、涙が蒸発しやすくなることもあります。
■ 日常生活でのちょっとした心がけで、ドライアイを予防しよう!
ドライアイの多くは、パソコンやスマートフォンの長時間使用など、ライフスタイルが影響しています。ドライアイにならないよう、日々の生活や環境を見直してみましょう。
○ 意識してまばたきを増やす
目の表面の乾きを防ぐため、パソコンなどのデジタル機器の画面を見ている際は、意識してまばたきする回数を増やしましょう。また、ドライアイを予防する観点からも、長時間の使用は避け、使用する際も目を定期的に休ませながら作業するようにしましょう。
○ 乾燥に注意する
涙の蒸発を防ぐため、エアコンなどの送風が顔に直接あたらないようにしましょう。室内が乾燥している場合も要注意。加湿器を置いて適度な湿度を保ち、涙の乾きを防ぐよう室内環境を整えましょう。
○ コンタクトレンズで症状が出る場合は、使用をいったん中止
コンタクトレンズをつけていて、目がゴロゴロするなどの症状が出る場合は、ドライアイの可能性が考えられます。コンタクトの使用をいったん中止して、症状の悪化を防ぐとともに、眼科を受診しましょう。
○ 市販の点眼薬の使いすぎに注意
ドライアイの治療では点眼薬が使用されることがありますが、安易に市販の点眼薬を使うことは避けましょう。市販の点眼薬の中には、防腐剤が含まれているものもあり、頻回に使用することによってかえって症状悪化につながるものもあります。
○ まぶたを温める
温めたタオルなどでまぶたを温めると、油分が分泌されやすくなり、涙が蒸発しにくくなります。
○ 十分に睡眠をとる
睡眠不足は、自律神経の働きを乱して、涙の分泌を減少させて目の乾燥を招きます。きちんと睡眠を確保し、涙の分泌量を保ちましょう。
■ 目の不調がある場合は、医療機関へ
ドライアイを放置すると、症状は目だけにとどまらず、肩こり、頭痛、さらには気分の落ち込みなど、全身にまで及ぶことがあります。またドライアイだと自己判断していたら、実はその裏に違う病気が隠れていることも。目の不調がある場合は、“単なる目の疲れや乾燥”と軽く考えず、必ず眼科を受診して健康管理に努めましょう。
参考資料:
「ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―」日本眼科医会ホームページ
ドライアイ研究会ホームページ
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