まだまだ暑い日が続くこの季節、冷房の効きすぎなどで体の「冷え」に悩まされている人も多いかと思います。とくに9月は夏から秋へと、季節が徐々に移り変わる時期。しっかりとした体調管理をしないと、「冷え」による思いがけない体調不良につながるので注意が必要です。
■ 「冷え」とは
「冷え」とは、多くの人が寒さを感じないくらいの温度でも、手足や下半身など体の一部、または全身が冷えて、つらい状態を言います。西洋医学では病気として考えられておらず、はっきりとした診断基準もありません。
■ 「冷え」と体温を調節するメカニズム
そもそも、体の「冷え」は、体温を調節するメカニズムと密接な関係があります。
人の免疫機能が最もよく働くのは、深部体温(脳や内臓などの体の内部の温度)が37度前後のときです。そこで、われわれは、深部体温を常に37度に保つため、自律神経を働かせて体温を調節しています(図1)。例えば、夏場に冷房の効きすぎなどによって室内の温度が低い場合、深部体温を維持するために自律神経が働き、血管を収縮して手足にまわる血液を減少し、体の中心に血液を集めます。そのため、深部体温は維持できますが、手先や足先などの末端までは血液が行き渡らず、体の表面の温度である「皮膚温」は下がり、体感として「冷え」を感じるのです。
図1 体温を維持するメカニズム
■ 冷えによって起こる不調
「冷え」の状態が長引くと体にさまざまな不調を招きます(表1)。
表1 冷えにともなって起こる主な症状
頭髪 |
抜け毛、白髪、薄毛 |
肌 |
くすみ、たるみ、のぼせ、むくみ、シワ、シミ、クマ、ニキビ、乾燥肌 |
歯・口 |
歯周病、歯肉の変色、歯肉の萎縮、歯肉の腫れ |
こころ |
イライラ、不眠、不安感 |
目 |
ドライアイ、老眼、近眼、疲れ目、かすみ |
その他、 全身の不快症状
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肩こり、腰痛、頭痛、だるさ、疲れ、関節痛、めまい、耳鳴り、月経痛、月経不順、アレルギー、便秘、下痢、動悸、ほてり、むくみ、肥満 |
- 資料:
- 「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」厚生労働省研究班監修をもとに作成
■ 夏の冷えを予防するためには
では、夏の冷えを予防し、改善するためには、どうしたらよいのでしょうか。
○ ゆっくり入浴する
夏はシャワーだけで済ましてしまう人が多いですが、冷えを改善するためにはお湯につかることが大切です。38~40度くらいのぬるめのお湯にゆっくりつかることで、自律神経の一種の副交感神経が優位になり、手先や足先の血管が拡張し、血液が行き渡ることで冷えの改善に効果があります。
○ 服装に気をつける
夏場は半袖やサンダルなど、肌の露出が高くなる時期です。とくに冷房が効いている職場などでは、上に羽織るものやひざ掛けを利用しましょう。また、体を締め付ける服装は、血流が滞り、冷えにつながるので避けましょう。
○ 冷たい飲食物のとりすぎに注意
飲食物の消化に適している胃や腸の温度(深部体温)は37度前後です。暑いからといって、冷たい食べ物や飲み物をとりすぎていませんか? 冷えた胃腸をもとの温度に戻すために体の熱が使われ、手足の冷えにもつながりやすくなるので要注意です。
○ 体を動かして筋肉をつけよう
人間の体から発生する熱の約6割が筋肉で作られます。つまり筋肉量が減ると、その分熱を作り出しにくくなり、冷えにつながります。普段から体を動かし、筋肉をつけるようにしましょう。
○ 規則正しい生活を送りましょう
早く寝て、早く起きるといったリズムある生活で、自律神経のバランスを整え、冷えにくい体づくりを心がけましょう。また、朝食は1日の活動に向けて代謝を高め、体温を上昇させるという意味でも重要です。毎日欠かさず朝食をとるようにしましょう。
■ つらい「冷え」は医療機関へ
なかには、単なる「冷え」による症状だと思っていたら、甲状腺機能低下症や膠原(こうげん)病など、何らかの病気が隠れていたということもあるので、注意が必要です。「冷え」によるつらい症状に悩まされている場合には、一度、内科などの医療機関を受診するようにしましょう。
<参考情報>
「低体温」 健康長寿ネット
「冷え」 女性の健康推進室ヘルスラボ
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