脳卒中というと、急に激しい症状に見舞われるイメージを持っている人が多いかもしれません。しかし、軽症の脳卒中では、「しびれ」や「ふらつき」など、熱中症とよく似た症状があらわれることがあり、夏の時期、とくに症状が軽いタイプの脳卒中が見逃される可能性があるので注意が必要です。
■ 脳卒中は脳がダメージを受ける病気
脳卒中には、脳の血管が詰まり血流が途絶える「脳梗塞」、脳の血管が破れて出血する「脳出血」「くも膜下出血」があり、いずれも脳細胞が大きなダメージを受ける病気です。
迅速な治療によって、後遺症もなく今までどおりの生活が送れる人がいる一方で、手足の麻痺や言語障害など後遺症が残る人や、亡くなってしまう人もいます。
■ 軽症から重症まで症状はさまざま
では、脳卒中ではどのような症状があらわれるのでしょうか。なかには「突然、意識を失って倒れる」ような、重篤な症状に見舞われる人もいますが、それは一部の人にすぎません。損傷を受ける脳の場所や程度によって、軽症から重症まで症状はさまざまです。
〇脳卒中の代表的な症状
・片方の手足・顔半分の麻痺・しびれが起こる
(手足のみ、顔のみの場合もあります) |
・ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない |
・力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする |
・片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける |
・経験したことのない激しい頭痛がする |
- 資料:
- 日本脳卒中協会
■ 熱中症だと思い、発見が遅れるケースも
ここで問題となるのが、「しびれ」「ふらつき」といった熱中症でもよく見られる症状が起こった場合です。というのも、患者さんのなかには脳卒中が起きているにもかかわらず、「熱中症みたいだから、少し様子を見ておこう」と対処せず、治療が遅れてしまうケースがあるからです。
脳卒中の治療は、いち早く行うことによって、死亡率を低下させ、退院後の生活への支障を減らすことがわかっています。
例えば、脳梗塞の場合、薬剤を投与することによって血管内の血栓を溶かす治療が有効であることがわかっていますが、発症から4.5時間以内に行わなければならず、またカテーテル(細い管)を使用して詰まった血栓を除去する治療の場合でも、発症後8時間以内に行う必要があり、「一刻も早く専門の医療機関を受診すること」が社会復帰のカギを握っているといえます。
■ おかしいと思ったら「FAST」チェックを!
治療のチャンスを逸しないためにも、脳卒中を見逃さないことは非常に重要です。ここで、自分でもできる「FAST」によるチェックを紹介します。
FAST チェック
Face(顔) |
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Arm (腕) |
- 片方の腕に力が入らず、両手を上げようとしても片方が上がらない
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Speech(言葉) |
- 短い文でも、言葉が出なかったり、ろれつが回らずに、うまく話せない
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Time(発症時刻) |
- 発症時刻を確認。早く治療するほど、後遺症が軽くなる可能性が高まる
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Face(顔)、Arm(腕)、Speech(言葉)、いずれか1つでも当てはまれば、脳卒中の可能性があります! Time(時間)を確認して、すぐに119番を。
■ 脳卒中が疑われたら、すぐに119番
もし「脳卒中かもしれない」と思ったら、ただちに119番に電話して救急車を呼んでください。たとえ症状が軽くても「様子を見よう」とすることは絶対にやめてください。自家用車やタクシーではなく、必ず救急車を呼び、医療機関を受診するようにしましょう。
救急隊員が到着するまでの対応も重要です。意識があるときは、すぐに周囲に助けを求め、その場で横になります。立ち上がったり、歩いたりしてはいけません。脳への血流が悪くなり、病状が悪化するおそれがあるためです。
本人に意識がない場合は、周囲の人の適切な対応が重要です。倒れている人の首を少し後ろにそらせ、楽に呼吸できるようにします。もし吐いてしまった場合には、体を横向きに寝かせ、吐いたものがのどに詰まらないよう対処します。
■ 症状が消えても、すぐに医療機関へ
脳卒中のような症状が一時的にあらわれても、24時間以内(数分~数十分)に消えてしまうものを「一過性脳虚血発作(TIA)」といいます。一時的に脳の血管に血栓が詰まることが原因で起こりますが、血栓が小さいため自然に溶け、症状も短時間に消えてしまうため、見逃されてしまうケースが多々あります。
しかし、「一過性脳虚血発作」は脳卒中の“前ぶれ”であることが多く、発作を起こした人の約2割が、その後脳卒中になったという報告もあります。症状が消えたからといって安心せず、すぐに医療機関を受診するよう心がけてください。
<参考情報>
日本脳卒中協会
「脳梗塞が起こったら」 国立循環器病研究センター循環器病情報サービス
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