インフルエンザは高熱が出るだけでなく、重い合併症を引き起こす可能性があります。本格的なシーズンが始まる前に、予防対策について知り、インフルエンザにかからないよう気をつけましょう。
■ 2つの経路でウイルスに感染
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスの感染で起こる病気です。感染者の咳やくしゃみの飛沫(しぶき)に含まれるウイルスを、鼻や口から吸い込むことで感染したり(飛沫感染)、電車のつり革やドアノブなど、ウイルスがついているものを触った手で、目や鼻、口などに触れることで、ウイルスが体内に侵入します(接触感染)。
■ 合併症を引き起こし、重症化することも
インフルエンザは風邪と異なり、危険な病気です(表1)。とくに、抵抗力が弱い高齢者は「肺炎」、乳幼児は「インフルエンザ脳症」といった合併症を引き起こし、重症化することもあります。様子がおかしいと感じた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
表1 インフルエンザと風邪の違い
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インフルエンザ |
風邪 |
感染力 |
強い。急速に広まる |
比較的弱い |
症状 |
鼻やのどだけでなく、38度以上の急な発熱、悪寒、倦怠感、関節の痛みなど、全身に症状が出る |
鼻やのどなど、限られたところに症状が出る。発熱することもある |
流行時期 |
主に冬季 |
季節の変わり目など一年中 |
重症化 |
65歳以上で死亡者が多い |
重症化することはほとんどない |
■ 流行前に予防接種を
有効な予防策は、インフルエンザワクチンの接種です。ワクチンを接種することで、インフルエンザの発病率を減少させるとともに、たとえ発病しても、重症化を防ぐ効果が報告されています。予防接種を受けてから、インフルエンザに対する抵抗力がつくまでに2週間程度かかるため、流行する前の12月中旬までに予防接種を済ませておくことが望ましいとされています。
なお、65歳以上の人(※)は、医療機関における年1回の接種が原則とされ、法律による定期接種の対象となっています。接種費用や実施期間は、市区町村によって異なりますので、広報誌で確認したり、担当窓口などに問い合わせてみましょう。
また、子どもや成人のインフルエンザの予防接種は、任意接種(費用は自己負担)ですが、重症化を防ぐという点からもできる限り受けることがすすめられます。
※60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器などの機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される人なども、インフルエンザの定期接種の対象となります。ただし、定期接種であっても、すでに重篤な急性疾患にかかっている人などは受けられない場合もあるので、接種の可否については、医師とよく相談した上で判断しましょう。
■ 日常生活でできる予防策
○ 外出後の手洗いなど
外出して帰ってきた際には、流水とせっけんでしっかりと手洗いすることが大切です。手についたウイルスを洗い流すことができ、予防効果が高まります。
○ 室内では適度な湿度を保つ
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つようにしましょう。
○ 人混みではマスク着用を
ウイルスは飛沫感染するので、とくに人混みや繁華街に出る際にはマスクを着用して、周囲からの感染を予防しましょう。
○ 十分な休養とバランスのとれた食事を
ウイルスから体を守る抵抗力を高めるためにも、持病がある人はきちんと治療し、日ごろから十分な休養と栄養バランスのよい食事をとることが大切です。
■ もしインフルエンザにかかったら
インフルエンザ治療の基本は、十分な休養と脱水症状を防ぐための水分補給です。このような対処をすることで、だいたい発症から1週間前後で症状が軽快していきます。
高熱が出る、呼吸が苦しいなど具合が悪い場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。検査の結果、インフルエンザと診断された場合、抗インフルエンザウイルス薬による治療が検討されます。48時間以内に薬を服用することで、通常より1~2日早く熱が下がり、重要化の予防につながるとされています。
ただし、たとえ熱が下がったとしても、一般的にインフルエンザ発症の前日から発症後3~7日間は、鼻やのどからウイルスを排出すると言われています。他の人にうつさないためにも、その期間は外出を控える必要があります。
なお、学校保健安全法では、「発症した後5日を経過し、かつ解熱してから2日(幼児は3日)経過するまで」を出席停止期間としています。周囲への感染防止として、保護者も注意しましょう。
<参考情報>
「平成30年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」 厚生労働省
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