「疲れが取れない」と悩んでいませんか? しかし、疲れの正体をつかめば、効果的な対処法がわかります。今回は、疲労のメカニズムを解説、間違った疲労回復法から脱却して、疲れを回復する正しい方法をご紹介します。
■ 疲れているのは自律神経だった!
疲労は、使った部位そのものに疲れが存在しているとのイメージがありませんか? しかし、実際には「自律神経」の疲労によって起こることがわかっています。
自律神経は、呼吸、心拍、体温、血液循環、消化吸収など、人間の生命活動のバランスを整えている神経です。自律神経が疲れると、その信号が自律神経の中枢のある脳に送られ「疲労感」として伝わり、人は「疲れた」と感じます。ですから、疲労とは自律神経の中枢の疲れ、つまり脳の疲れというわけです。
■ 心身の健康は自律神経のバランスが肝
自律神経には、活動時に働く「交感神経」とリラックス時に働く「副交感神経」があります。交感神経は車にたとえるとアクセル、副交感神経はブレーキ。車の運転でも、アクセルとブレーキのバランスが重要なように、心身をよい状態に保つためには、自律神経のバランスを整えることが何より大切です。
○自律神経の働き
自律神経 |
交感神経 (緊張・興奮の神経)
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血管が収縮し、心拍数・血圧ともに上昇。
体は緊張・興奮モードに入る。
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副交感神経 (リラックスの神経)
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血管が拡張し、心拍数・血圧ともに下降。
体はリラックスモードに入る。 |
■ 自律神経の機能は加齢で老化する
自律神経の機能は年齢が上がるにつれ、低下していきます。加齢とともに疲れやすくなるのはこのためです。50代になると、ピーク時の10代に比べて1/3にまで低下するとの報告もあります。ですから、中年期以降は、とくに疲れへの適切な対処が必要になってきます。
しかし、多くの人が疲れを取るために間違った対処方法をしています。あなたは大丈夫?
こんな疲労対処法はNG
□体力をつけて疲れにくくするため、朝食前の運動を日課にする
×交感神経が活発になる前の運動は、心臓に負担をかけます。運動は朝食後30分休憩したあとにしましょう。
□仕事で疲れたときは、運動で汗をかいてストレスをリセットする
×仕事の疲れも運動の疲れも、同じ自律神経の疲れのため、疲れが倍増してしまいます。まっすぐ家に帰って休みましょう。
□疲れたときは、栄養ドリンクの助けを借りる
×栄養ドリンクの疲労回復効果は医学的に証明されていません。カフェインとアルコールの覚醒作用で、疲れた感覚を麻痺させ「隠れ疲労」に陥る危険があります。
■ 「睡眠」で自律神経の疲れを回復!
現代の疲労医学では、一度発生した疲れ自体を回復させる手段は、「質のよい睡眠をとること」ただ一つであるとしています。睡眠の目的は「眠ること」ではなく、「起きているときに生じた疲れを解消すること」であることを、改めて理解しましょう。
眠りの質を上げる5つの方法
- 毎朝決まった時間に起きる
朝に目覚め、夜に眠くなるのは「体内時計」に従って自律神経が働くためです。体内時計のリズムを整える効果的な方法は、毎朝の起床時間を同じにすること。すると夜も一定の時間に自然と眠くなります。
- 軽い運動を取り入れる
疲れがたまっているときは運動をせずに休むべきですが、通常の場合、軽い運動は深い眠りをもたらします。ただし、寝る前の激しい運動は交感神経が優位になって眠りを妨げるので注意しましょう。
- お風呂はぬるめのお湯で半身浴
熱いお湯に入ると交感神経が優位になり、自律神経に負担がかかります。反対に、ぬるめのお湯で半身浴すると、副交感神経が優位になってリラックスした状態になります。
- 睡眠前にリラックスタイムをもつ
交感神経が優位の状態から、副交感神経優位へ移行するためのリラックスタイムを意識して作るようにします。音楽を聞いたり、アロマに癒されたりしてのんびりとすごしましょう。お酒、たばこ、コーヒーは覚醒作用があるのでNGです。
- 明るすぎ、暑すぎ、寒すぎに注意
就寝前の明るすぎる照明、スマホやパソコンの画面の光は、視神経を通じて交感神経を優位にします。また不快な室温は自律神経に負担をかけるため、エアコンなどで適温に調節しましょう。
質のよい睡眠で、「その日の疲れはその日のうちに」回復させることが大切です。「疲れた」「眠い」などの生体サインを無視して無茶な行動を続けると、そのツケは必ず自分に返ってきます。日々生体サインに耳を澄まし、自律神経が疲れないようにいたわってあげましょう!!
- 参考
- 梶本修身「隠れ疲労」朝日新書
梶本修身「すべての疲労は脳が原因2<超実践編>」集英社新書
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